根比べ 時には譲れないことも…

兵庫県川西市の高橋ピアノ・リトミック教室です。

入会からちょうど一年ほど経った幼稚園児。
習う音も増えてきて、使う指も増えて 思うように動かない…
上手に弾けないから 先生の前で弾きたくない…
そんな感じが伝わりつつ、その日のレッスンが始まりました。

初めは 「止まってしまう」だの 「左手のとこが難しい」だの、笑顔で話してくれていました。
「そうなのね〜。わかったよ。弾いてみて。どこが出来ないか見るね。」と普通に答えたつもりでしたが…
急に黙り込み、首を横に振るばかり…
え?どうした?
言葉かけを変えてみた。「ゆっくりでいいよ〜」「……」
「右手だけ弾いてみようか。先生が左手のところ弾くね」「……」

なになに?ヤバイ感じ…目が潤んでる?ごめんなさいが言えない子に謝らせるのってこんな感じだったよね…
この子の後は空き時間がある。その次の兄弟はお休みで今日は時間がある。
こっちも腹をくくるか…

下の子が車で寝てしまった、と親御さんは車で待たれていました。
親御さんには携帯でメッセージを送り、長期戦になりそうなので 一旦、お帰り頂きました。

「先生はピアノの先生だから、一回もあなたのピアノを聞かずに さようならなんて 出来ないよ。」
「弾いてみようかと思ったら 弾いてね。夜までそうしてるのかな〜?」
「こっちで一緒に 音符ゲームしようか」

アメとムチの言葉を手を変え品を変えて投げかけましたが、動かず首を横に振るばかり…

大好きな大譜表と色音符を用意しても 動かない…シロフォンを出しても動かない…
「よくわからない音があるのかもね。わからないのは あなたが悪いんじゃなくて先生が悪いんだよ。わかるまでゆっくりやろうかな。おいで」
この言葉がきっかけでやっと 椅子から降りてそばに来ました。約40分かかって…

まずは 紙鍵盤にドレミから順番に色音符を置かせました。
次に大譜表にドレミから順番に色音符を置きます。それぞれの音符の色はシロフォンの色と連動しています。
次はヘ音記号です。ドシラ、と順番に同じように色音符を置き、大譜表にも置いていきます。
じゃあ、ドの音に このお人形乗せて。次は ソの音にどれかのお人形置いてみようか、2つあるね。など相談しながら理解を深めます。
次は今日の宿題の曲です。
大譜表を見ながら 楽譜に色音符を置きます。
ここが同じ、とか2つ同じ音〜など 沢山の発見をしながら 簡単な分析をしていきました。
この頃にはいつもの笑顔です。
じゃあ、これ、シロフォンで叩いてみようか。足りない低い音はトーンチャイムを出しました。
伸ばす音、お休み、色々気をつけて上手に出来ました。

いよいよ、ピアノに誘う時…
案外すんなりピアノのところに移動してくれ、拍子抜けするほど スラスラと 今日の宿題の5曲を弾ききりました。
自信がなかったのか、失敗が怖かったのか、自分を責めていたのか、何が原因でこじれたのかは わかりませんが
最後まで頑張った顔は晴れ晴れとしていました。

親御さんに連絡し、お迎えに来られた時、開始から 2時間10分が経っていました。

自分の子育ての時も確信しましたが、この人は 許してくれない、そうわかった時、やっと子供は前向きに頑張ってくれる気がします。やるしかない、と子供なりに 腹をくくるのかもしれません。
そして やりきった時、本当に素晴らしい笑顔になります。

大変な根比べでしたが、今回は 譲らずに 頑張って良かったと思いました。
生徒から教えられることは まだまだ 沢山あると思います。
私も勉強になったレッスンでした。